声
ノートルダムの鐘の音をこの耳で
聞いた。
星型のドライバーが見つかれば
私の人生の歯車が軋む音立て動き出す。
2016年6月6日早朝6時26分
一睡も眠れなかった夜を越えて。
私はその晩、あらゆる忘却を知る。
思い出せなくなっている。
過去が消える時、私は消えてゆく過去を
知る由もなく毎日を過ごしていたこと。
私たちは未来の建築家である。
中学の時、他校へ移動になった女の先生(中年だが名前も顔も覚えていない)が別れの挨拶で全校生徒の前で言った言葉。
誰かの名言だと言ってた。
過去の記憶の喪失が嘘みたいに激しい私の中に貴重にも生き残り、時折思い出す言葉。
(時を同じくして移動になった癖のある理科の先生は "じゃ、あばよ。"とだけ右手を上げて言ったことも、もれなく思い出す。)
そんな限られた、記憶はやはり
私にとって意味があったからこそ
残されたものなんだろう。
誰かがあくびをして聞き流した言葉。
私は自分の過去をどうにもできないし
誰だろうとそれは同じ。
ただ自分の未来を変えられるという
希望と恐怖を持っている。
たまに私が過去にとらわれてしまう時に、埋もれゆく最後の手を掴んでくれる先生の声。