「 少しは心が落ち着くかもよ 」
そういって彼がくれたのは水晶のペンダントだった。
私はそれをお風呂以外ではいつでもつけた。
別にパワーストーンの『パワー』なんて少しも信じていないけど
あまりにその水晶が純粋で、美しいものだから
それを身につけるのがただ好きだった。
けれどその無垢な美しさゆえに
逆に自分の醜い部分が浮き彫りになる気がした。
それがだんだん息苦しくなって、ペンダントをはずす時間が長くなった。
とうとう全くつけなくなって、
しばらく壁に刺したピンにぶら下がっていたけれど、
いつのまにかそのペンダントもどこかにいってしまった。